とある日のミーティングで、こんな話題が持ち上がりました。
「“ひとりビジネス” を提唱している人には申し訳ないけど、その時代は終ったよね」
「“個の時代” という追い風の期間ってすごく短かったですよね。そのタイミングで独立した人って逆にいまが厳しいというか…」
その様子はまるで『ロストジェネレーション(※)』を思い起こさせるようなものでしたねと、私がつぶやいたことをキッカケに本日の寄稿記事が生まれました。
2008年のリーマンショックや、2011年の東日本大震災をキッカケに独立を考えた人たちの中には、2004年にスタートしたアメーバブログや2008年にFacebook の日本語版がリリースされたという背景に合わせ、文字通りに「個の活躍」を始めた人たちが現れました。
「これからは“個の時代”だ!」
そう勇んだのも束の間。2017年頃にはオンラインサロンの普及や、リモートワークに便利な各種ITツールが急速に広まったことを受け、時代は“個”から“コミュニティ”の時代へと移り変わりました。
2008年~2016年頃までのおよそ8年の間に独立した人たちは、もしかするとこれまでの学びをアンラーニングし、捨て去る必要さえ出てきているかもしれません。
まさに『ロストジェネレーション(失われた世代)』の個人事業者版です。
今日はそんな時代に独立した私、「大崎博之」のこれまでの悲劇をお伝えしたいと思います。
※ロストジェネレーション
バブル経済崩壊後の超就職難だった93―05年頃に学校を卒業した世代を指す。正社員の就職先が少なく、非正規雇用などで職を転々とする人が多く出た。「就職氷河期世代」とも呼ばれている。
2015年の独立からたったの3年間で憔悴
私が個人で独立起業したのは2015年。
アメブロやFacebook を界隈では「起業女子」と呼ばれる、起業を“ファッション”として楽しむ30代~50代の女性が盛んにSNSで発信をしていた頃。
ゴールドラッシュで一番儲けたのは、ゴールドを追った人間ではなくその周辺でつるはしやジーンズなどを支援した人たちであったという話と同じで、世の中が“起業”に沸く頃にもっとも儲かったビジネスは「起業コンサルタント」でした。
御多分にもれず、私も「起業コンサルタント」として活動を開始しました。一種の流行でもあったと思います。起業ブームとも呼ばれていました。
講師やコンサルタントという仕事は利益率が非常に高く、売上のほとんどがそのまま利益となります。それでいて仕事やお金に直結するものごとでもあるため、価格も高単価。ブームの影響もあってか30~100万円単位の値段設定でも違和感がない商売でした。
同じ時期にブロガーやアフィリエイターという職種も流行ってはいましたが、この講師やコンサルタントという仕事もまた「個の時代」を象徴する働き方のひとつだったのです。
まさに時代の波に乗った、個人の生き方。
ただし、ひとつだけ大誤算があったのです。それこそが「個の時代」という意味の捉え方でした。
個の時代というのは“ひとり”で頑張るビジネスという意味ではなく、チームやコミュニティで共創しながら、“個々を活かしていく” ということが本質だったのです。
結果、2015年からのひとりビジネスの勢いは急速に衰え、2018年を迎える頃にはすっかりとコミュニティの時代が到来し、個人起業家たちは行き場を失くしてしまったのでした。
ファッションとしての“起業”をする人たちは起業ブームの終焉と共に消え、それはつまり「起業コンサルタント」のお客が減ることを意味していました。
またコミュニティとして組織的に働く人たちを前に、たったひとりで孤軍奮闘するビジネスは商品クオリティの面でも限界をきたし、社会的にもすっかりと「ひとりビジネス」の需要はなくなってしまったのです。
フリーランスという突破口
個人の時代を、“ひとりで活躍していく時代” と読み誤った個人起業家たちを総じて『ロストジェネレーション』と呼ぶのであれば、その人たちにとってのほぼ唯一の突破口が「フリーランス」という働き方なのではないかと私は考えています。
これまで「講師」や「コンサルタント」として、先生と生徒の立場を都合よく利用してきたヒエラルキー型のビジネスの多くは、時代の波にさからえず今もなお苦戦を強いられています。
そんな中、自分たちの持つスキル(機能)のうちどれかひとつをフリーランスとして提供する働き方が時代の流れに沿い始めました。
Webデザイナーやライター、動画編集などのスキルを活かして誰かの事業を支える人たちをフリーランスと言います。極端に言ってしまえば、どこかの下請けになるという発想です。
ただし、ここで2つの見方ができます。
ひとつは従来のフリーランスに見るような「単なる下請け業者」としての位置づけ。そしてもうひとつが、「同じビジョンを志すコミュニティメンバーとの共創ビジネス」です。
作業代行になってしまえば本当にただの下請けですが、同じビジョンを共有する仲間たちと共創するということは、作業代行をしているという表面的な部分ではまったく同じだとしても、その中身はまったく異なるものです。
私もまた、ブログやSNS、メルマガを中心に、“完全にオンラインだけで集客やブランディング、高単価商品の販売までを完結”させてきたその「ライティングスキル」を活かしてフリーランスのライターへと転身しました。
2015年に起業コンサルタントとして独立し、2018年にはライターへと路線変更。本当の意味での“個の時代”への挑戦はここから。
今回の寄稿記事を執筆している “私” 大崎博之の戦いはここから始まります。
フリーランスという形だけを真似てもダメ
実はこちらの記事でもインタビュアーとして参加しているのですが↓
「ひとりビジネス」というのはいくつかの課題がある中で、特に致命的な2つの欠点があります。それが…
- メンタル的に不調をきたしやすい
- 自分ひとりで達成できる範囲で考えがちなのでビジョンが小さくなる
そのためにおそらく多くの人が課題を突破するために、次のような対策を取ることが多いように感じています(個人の感想です)。
メンタル面においてもビジョン作成においても、まずは外部にコーチやカウンセラーを置き、いつでも相談できるような体制を作っておく。
これによって両方の課題を解決しようとします。また、仮に大きなビジョンが描けたとしてもそれをひとりのままでは達成することは困難です。
そのため、達成できるビジョンについては従業員やアルバイトを雇用し、個人から組織の働き方へと仕組みを作りかえていく、ということをしたりします。
一見して悪くない解決アイデアのようにも見えますが、つながりの中心に「お金」があることによって、その関係性は非常にもろくなってしまっています。
自分のビジョンと、会社のビジョンが重ならない限り、「お金という理由だけでは人は働かなくなってきた」という時代の動きを感じるエピソードです。
そういう意味においても、「ひとりビジネス」をしてきた人間は、ここの部分に弱みを抱えている人が多いように感じています。私もそのひとりです。
ビジョンを共有し、下請けや従業員という関係性ではなく、一緒に夢を叶える仲間という位置づけでチームを運営していくコミュニティスキルが大きく欠けているんです。
「フリーランス」という働き方の表面だけを真似ても意味がなく、コミュニティスキルを身につけていくという前提を持たなければ、ヒエラルキービジネスの崩壊から自らを救うことにはならないのです。
フリーランスからコミュニティビジネスへ
フリーランスとして誰かのビジョンをお手伝いをすることもできれば、自らがビジョンを描き、仲間と共に実現を目指していく。
その両方向からの新しい生き方を具体的に実践できる本との出会いがありました。
人と人とのつながりを財産に変える オンラインサロンのつくりかた
技術評論社から出版されている、中里桃子さんの著書でした。
という悩みを抱える中で、この本はまさに突破口となる希望でした。
私が好きな『ONEPIECE(ワンピース)』という人気マンガがあります。その主人公の生き方はまさにコミュニティビジネスで、昔からそこへの憧れがありました。
という浅はかな考えを払しょくしてくれた本が『人と人とのつながりを財産に変える オンラインサロンのつくりかた』であったと言っても過言ではありません。
『ONEPIECE(ワンピース)』の主人公ルフィは、仲間を集めるときに決してこのようには言いません。
「仲間になれよ。給料ならいくらでも払うぞ!」「お前のスキルはおれの役に立ちそうだ、仲間になれ!」
こんな風に誘うことは絶対にないのです。
その代わり、自分の夢と相手の夢とを重ね合わせ、一緒にゴールを目指していくことがお互いのためだとわかった時に初めて「仲間になろう!!」と誘います。
今回ご紹介した中里桃子さんの本には、この仲間集めを具体的にやっていくステップが明確に書かれていたのです。
表題こそ「オンラインサロンの作り方」ではありますが、その本質は「これからの時代のコミュニティの作り方」だったのです。
ロストジェネレーション(失われた世代)の希望
現在私は、フリーランスとしていくつかの事業にジョインし、共通するビジョン達成のためにライターという位置づけで活動をしています。
その一方で、“自分発のビジョン” によって仲間を募り、金銭の絡まない形でのプロジェクトなども始動させています。
しかしそれは、これまでの「お金」を中心に据えたコミュニティでのつながりではなく、「ビジョン」を核にして集まったコミュニティでの組織的な働き方です。
ひとりビジネスの致命的な欠点であった
- メンタル的に不調をきたしやすい
- 自分ひとりで達成できる範囲で考えがちなのでビジョンが小さくなる
という課題は、「ビジョンを中心に集まった仲間とのコミュニティ」によってその両方が解決したのです。
もちろんこれまでコミュニティスキルというのをないがしろにしてきた代償は大きく、やり方やノウハウがわかったからといって一朝一夕に移行できるものではありません。
『ロストジェネレーション(失われた世代)』が“個の時代”を見誤ったミスは大きい。しかし、取り返しがつかないものでもありません。
現在、中里桃子さんを代表に活動する株式会社女子マネでは「ひとりビジネス」はおろか、スキルもビジョンも持ち合わせていないという段階からもステップバイステップで「コミュニティアントレプレナー」になれるという、全ステップを公開しています。
ひとりでビジネスをする「個人起業家」を脱出し、コミュニティで起業をする「コミュニティアントレプレナー」。
これこそが“個の時代”を見誤った『ロストジェネレーション(失われた世代)』の新たな希望なのかもしれません。
「オンラインサロンのつくりかた」出版記念
もくじ&第1章と活用方法レクチャー音声
1月26日に発売の「オンラインサロンのつくりかた」(技術評論社)の第一章と解説音声を、1月25日から配信いたします!
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