中里:私は今の会社を作ってから、1年目や2年目は「オンライサロンの作り方」を教えるという仕事をしてきたんですね。
それをする中で、「オンラインサロンを作る」という以前にそもそもの発信力がないとか、
人として信頼してもらうためのベースがまだできていない人たちがいることに気づいたので「マイクロインフルエンサー講座」というのを作りました。
これは何かというと、
「自分が立てた企画に3人の賛同者、もしくはお客様を必ず作れるようにする」
というのが目的になります。

ひとりビジネス、独創モデルの限界
中里:「オンラインサロンの作り方」についてはもうほとんどのことは本に書いてしまったのでそちらを読んでいただければいいのですが、
著書:人と人とのつながりを財産に変える オンラインサロンのつくりかた
その前に押さえておかなければならない大切なことがあります。
それは、ひとりの起業家としてきちんとコンテンツがあり、その内容に対してお客様が納得感をもってくれるような発信をすることができるということ。
そういう人でなければ「オンラインサロンの作り方」の構造を教えても成り立たない、ということがこれまでの経験からわかってきました。
坂下:そうなると、マイクロインフルエンサーとして“自分の企画に3人の賛同者が集まる”ようになったあとは個人の力でマネタイズ、
…つまり、「ひとりビジネス」でお金を稼げるようになる段階が、オンラインサロン立ち上げ前のステップとして存在するということでしょうか。

坂下:「ひとりビジネス」をもう少し具体的にいうと、Facebook やアメブロなどで集客していた「コーチ、コンサル、講師、セラピスト」というような職種の人たちが代表的かなと思うのですが。
「マイクロインフルエンサー」としての活動ができるようになったら、次は「ひとりビジネス」を目指すことが、オンラインサロンを作るにしても、今後のマネタイズをしていくにしても必要ということになりますか?
中里:実は反対で、「ひとりビジネスをやってはいけない」と私は考えているんです。
そういう意味で今回は、ひとりビジネスとは異なる「代替案」を提案したいなって思うんですよね。
正直なところ、ひとりビジネスのやり方というのは「マーケットを絞って、自分だけが自分らしく生きる」という側面があったんじゃないかって思うんですよ。
その結果として、ニッチな小さなお山の大将にはなれるけれどそこ止まり。現象としては「オタサーの姫」に近いものがあるんじゃないかなと。
…というか私がまさに、比喩としてですけれど、その「オタサーの姫」を目指していた時期があるんです。。
大崎:「オタサー」ってオタクのサークルって意味ですよね。そこの姫っていうことはつまり…、限られた小さな世界の中で姫扱いされることに満足してしまって、あまり大きな向上心を持たない、、みたいなイメージが浮かんできます。
狭い範囲の中で自分が一番だと得意になっている「お山の大将」そのものですよね。
それ、けっこうヤバイ状態な気がしますが。。

大崎:私自身がまさにその「お山の大将」のような状態でこれまでひとりビジネスを展開してきた経験から、なんとなくこの業界が抱える課題のようなものも感じています。
ひとりビジネスで、ある程度の生活ができるようになるまでがひとつのゴールで、そのあとはなんとなく閉塞感というか、行き詰まりのような感覚が出てくるんですよね。
しょぼいカリスマというか……。
自らコンテンツを作り、例えば経営塾などを開けるようになると受講生も集まってきてくれて、最初はそれで自分の満足度がけっこう高まるんですよね。
ただ当然ですが私自身が「先生ポジション」に立つため、集まってくるのは「生徒」なわけです。そうなると少しずつですが、“仕事を通して自分を成長させる機会” というものから遠ざかる気がして、ちょっと働き方のスタイルとして物足りなさを感じることがあったのも事実です。
中里:なぜそういう現象が起きるのかというと、結局は自分が頂点になり、その自分に対して人が集まる、というヒエラルキー構造を作っているからですよね。
自分より大きなビジョンをもって仕事をしている人や、自分よりスキルが高い人を巻き込んでビジネスを拡大するという機会を失ってしまう。
結果として、「食える程度にはなったけど、この先に何かワクワクすることが起きそうにもないな」っていう行き詰まり感が出てくるんだと思うんですよ。
坂下:まさに「ひとりビジネス」の大きな課題ですよね。
せっかく「マイクロインフルエンサー」として立ち上がることができても、その先のビジネス、つまりマネタイズの段階で頓挫してしまうようでは希望がないですよね……。
それに対し中里さんから「代替案」があるとのことでしたが、それはどういうものなんですか?
独創モデルから共創モデルへの移行

中里:代替案を示す前に、そもそもなぜ「ひとりビジネス」を選択するとお山の大将やオタサーの姫のような状態になり成長機会が失われ、その果てに「なんだかつまらない…」という状態になってしまうのかということを話さないといけないですよね。
その原因はシンプルで、
「自分にできることの範囲でビジョンを描いてしまう」
ということに問題があるんですよ。
私の話になりますが、自分一人でできることで未来を描くということはまずしないんですね。必ず自分の未来に、いろんな機能(スキル)を持ってる人を入れこむようにしてる。
だから大きいことが考えられるし、そういう人がいないと成り立たないので、そのプロセスも楽しくなるんですよね。
ひとり孤独に歯をくいしばって頑張ってしまうと、もっと頑張るために、もっと歯をくいしばらなきゃいけないってなりますよね。それって大変だと思っていて。
これを「みんな」で共創していくと、たとえば先月なんかはみんなで合宿に行ったりもしましたし、大変な時期にはすぐに相談できる環境ができあがるんです。
そういうのって良くないですか?
大崎:「歯をくいしばって孤独に頑張るパターン」を、私は今でも実のところやっていて、正直だれにも相談できないっていうのは苦しいんですよね。
売上に伸び悩んでいるときや、ていねいにプロモーションを積み上げたのに集客が散々だったときとか、もう押し迫ってくる不安にどうにもこうにも対処できなくなったりして…。
これはもうカウンセリングに通うしかないかなって何度も思いましたね。
中里:でしょ? なので私が提案したいのは「独創モデルから共創モデルへの移行」という代替案なんです。
このコンセプトは、
起業塾や協会に入り、一応は食べていけるようにはなったけれど、集まってくるお客さんとのヒエラルキー関係に飽きて、さらに自分ひとりでできる仕事の規模感にも飽きてきた人が、
「共創モデル」を通して、ひとりでは到達できないビジョンや、自分では作れない大きなビジョン、規模感で仕事をしている人たちとチームで仕事ができるようになること
なんです。
ひとりビジネスからコミュニティビジネスへの転換、フリーランスからチームランスへの転換、と考えてもらうとわかりやすいかもしれません。
過去に私も似たような悩みをもっていたからこそ言えるんですよね。
独創モデルが「ひとり起業家」なのに対し、共創モデルは「コミュニティ起業家(コミュニティアントレプレナー)」という立ち位置になります。
共創モデルの魅力

大崎:話を聞けば聞くほど、この「独創モデル」は私がこれまでやってきた働き方のスタイルそのものですね……。
自分にできること、自分の持っているお金と時間、リソースの範囲だけで未来を考えるから延長線上から脱することもできない。
その閉塞感があるから面白くないし、飽きてもいるんだけど、それで今はご飯を食べているから止めるわけにもいかないという。。
中里:悪循環というか、行き止まりですよね。でもこれを「共創モデル」にすると、一緒にやってみようって声をかけられる仲間ができるんです。
自分ひとりでは無理そうなことへ挑戦するときにも、「お金がない」「自分の時間だけじゃ足りない」ということに悩まなくなるんですよね。
「これやってみたいな~」って思いついたことを、ポーンって投げるチームがいるだけでどんどん進むんですよ。そういう状態だから止まらないし、不安もあまりなく、楽しい日々。
私はこれまで、そういう仲間がいなかった時期ってないんですよ。
だからもし、いまの延長線上から抜け出せないとか、ひとりで不安を抱えるのはもうイヤだなとか、そんな風に思うんだったら、
たとえば自分がもっている5つのスキルのなかの一つのピースを磨いて、自分ひとりじゃ描けない面白いことやっている人、大きなビジョンを描いている人のチームに入れるようなチームランスの働き方、
「コミュニティアントレプレナー」になりませんか? って提案したいんですよね。
共創モデル実現に必要なスキル
坂下:独創モデルが「ひとり起業家」なのに対し、共創モデルが「コミュニティアントレプレナー」ということになると思うのですが、具体的にはどうすればなれるのでしょうか?
これまでの風潮を考えると、まずは自分で商品を作って、自分で集客をして、という話になってしまう気がするのですが。
中里:まずは自分の「機能(スキル)」と「ビジョン」を明確にする必要があります。
これは「マイクロインフルエンサー講座」の内容とも重なりますけれど、とことん自分と向き合って、仕事のスキルやビジョンをみていって、「ああ、自分はこんなパズルピースなんだ」ってわかることが大切です。
ここまでは自分主体で考える「自分目線」でOKです。
その次に今度は、周りの人と「機能(スキル)」と「ビジョン」をぴったり合わせるために、「脱・自分目線」で、どう整えるか、どう接続できるかを考えピースを磨きます。
もう一度パズルを思い出してもらいたいのですが、まずは自分の「機能(スキル)」がしっかりしていないとピースになれませんよね。

坂下:『ONE PIECE(ワンピース)』という人気アニメがありますが、主人公のルフィが海賊船の船長である一方、コックがいたり航海士がいたりと、それぞれの役目があるから成り立っていますよね。
もしクルーの全員が「海賊王に、おれはなる!」って言い出したら収集がつかなくなる。
中里:自分の「機能(スキル)」が分かってきたら、もうひとつ「ビジョンの明確化」も行います。
先程のパズルでいうと、たとえば「世界平和のビジョン」と「世界征服のビジョン」があるとしたら、自分が完成させたいパズルはどんな絵(ビジョン)なの? ということです。
「どんなパズル画のピースになりたいのか」がはっきりしないと、チームに入るにしても仲間を集めるにしても、ビジョンを重ね合わせていくことができませんよね。
そのためにも、「私がこれをやりたい」ではなく、「社会」を主語にする必要があります。
私は「愛情表現をするように仕事をする人で世の中をいっぱいにする」というビジョンを掲げていますが、そうしたいと思うようになったのには父親の働く姿が影響しています。
仕事がつらいと言いながら定年まで勤め上げるという状況をみてきて、私はちがう働き方をしていきたいなと思ったんです。
でもこのままだと主語が「私」なので、これを「社会」に置き換えます。
すると、
自分らしい役割や生き方をつかんで欲しい。愛情表現をするように、ていねいに仕事をする人であふれてほしい。そうすることで子供たちも仕事に対して前向きになれるし、いまを生きている人たち自身も幸せになれるから。
という社会的なメッセージとしてビジョンを打ち出せます。そうしていかないと、ビジョンを重ね合わせていくことができませんから。
私が自由な生活をしたいからあなたはそれを手伝って、というのはちがいますよね。
一方でこれを「機能(スキル)」だけを切り出してビジョンを持たずに協業していくと、残念なことに “ただの下請け” という状態になってしまうわけです。
共創モデル移行の課題

大崎:いや、でもちょっと待ってください! たとえば「独創モデル」「ひとりビジネス」の代表格でもあるような「先生ビジネス」を極めようと目指してきた人がいますよね。まさに私なんですが…。
その場合ってそもそも「組織的に動く」ということが苦手だったから独立したという経緯もあると思うんですよ。これもまさに私なんですが……。
しかも下手に成功体験があったりすると「私は先生だぞ、今さら誰かと一緒に働くなんて…」という妙なプライドや葛藤がある人もいると思います。いや、それも私なんですが………。
でも未来はもうどん詰まっていて、閉塞感もある。。
あれ、私はどうしたらいいんでしょう??
中里:これから共創モデルへ移行するための「考え方」と「ふるまい」を学ぶ必要はあるんじゃないかと思いますね。
まあ、これもぶっちゃけ言いますけれど、起業している人たちでうまくいっている大多数は「会社員」としてしっかりやってきた人たちですからね。
たとえ会社員としてうまくいかなかった人でも、まともな上司や自分を信じてくれる他者と出会っていなかっただけ、っていう人は、信じてくれる他者と出会って努力をするっていう過程があって花開いています。
そうじゃないのであれば、後からスキルとして身につけていくほかないですよね。10代で起業して社会人経験が少ない人なんかはそのパターンだと思いますよ。
でも安心してください。自分のピースを磨くための「考え方」と「ふるまい」というのは十分にあとから身につけることができるものなので。私の方でもすでにカリキュラムとして体系化を進めています。
大崎:そういえば最近、10代で起業した女性が1年間に200社以上の人と商談し、会う前の予習と会った後の復習は欠かさないようにしていると発言していたのを思い出しました。。
では「考え方」と「ふるまい」はこれから身につけていくとして、妙なプライドの部分ってどうしたらいいんでしょうか。いや、そんなの捨てちまえって話だとは思うのですが……。

坂下:ちょっと待ってください、大崎さん。また『ONE PIECE(ワンピース)』の話になってしまうのですが、白ヒゲとエースのお話はわかりますか?
ある程度名の知れた海賊になったエースが白ひげに戦いを挑み、負け、そして一員になるまでの物語です。最終的に白ひげという男に惚れてエースは仲間に加わるんです。
どんなにプライドが高かったとしても、そんなものが気にならないぐらい大きなビジョンを持っていたり、一緒にやっていきたいと思える仲間と出会えたら、それこそ「ひとりビジネス」「先生ビジネス」で手に入れたプライドなんて小さなものかもしれませんよ。
中里:私はあまり『ONE PIECE(ワンピース)』はわからないんですけれど、「共創モデル」であるコミュニティアントレプレナーの先にもうひとつ、魅力的なステージがあることを知ればまた考え方に変化が生まれるかもしれませんね。
それについてはまた別の機会に「記事」にしていきましょう。
まとめ
坂下:それでは最後に私の方で今日の会議の内容をまとめると…
- マイクロインフルエンサーは、自分で立てた企画に必ず3人の仲間ができる
- コミュニティアントレプレナーは、自分では作れない規模感や大きなビジョンを掲げている人と仕事ができる
- マイクロインフルエンサーは「お金を稼げる」わけではない
- コミュニティーアントレプレナーは事業者なので「お金を稼げる」
- コミュニティアントレプレナーは、必ずマイクロインフルエンサーじゃないと成り立たない(必要条件)
そして、「独創モデル」ではなく「共創モデル」、「ひとりビジネス」ではなく「コミュニティアントレプレナー」であるべき理由のポイントとしては…
- 「ひとりビジネス」はオタサーのアイドル or お山の大将
- 自分にできることの延長ではなく、仲間と共有するビジョンの延長に未来をみよう
- コミュニティアントレプレナーは、一介の下請業者とは一線を画す
- コミュニティアントレプレナーのその先に、さらにもうひとつの魅力的なステージがある(続きは次回)
大崎:今日はありがとうございました。
中里:ありがとうございました。
坂下:また一緒に『ONE PIECE(ワンピース)』のお話をしましょうね!
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もくじ&第1章と活用方法レクチャー音声
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